ヒョンデ自動車の第2世代ハイブリッドシステム完全ガイド
ハイブリッド技術といえば、かつては「燃費の良さ」が最大の魅力でした。しかし、時代は変わりつつあります。
現代自動車(ヒョンデ)が発表した第2世代ハイブリッドシステムは、従来の枠を大きく超える性能と利便性を備え、まさに“次世代のハイブリッド”と呼ぶにふさわしい完成度を誇ります。
本記事では、この革新的なシステムの構造的特徴、最新機能、そして競合であるトヨタのハイブリッドとの比較を通して、その全貌を徹底解説します。
1. ハイブリッドシステムの構造進化
P1+P2の並列モーター構成がもたらす革新
ヒョンデの第2世代ハイブリッドシステムは、従来のTMED(トランスミッションマウント型ハイブリッドシステム)をベースに、P1モーターとP2モーターを物理的かつ機能的に分離し、それぞれを並列に配置する設計を採用しています。
- P1モーター:エンジンに直結し、車両の始動、発電、および回生ブレーキ時のエネルギー回収を担う
- P2モーター:変速機に接続され、主に車両の駆動やEVモード走行を担当
この並列構成によって、エネルギーのロスが最小限に抑えられ、純電動走行モードの航続距離が従来よりも大幅に向上。また、始動時やエンジンとの切り替え時におけるショックを抑えることが可能となり、静かでスムーズなドライビング体験が実現されました。
従来のハイブリッドでは難しかった“エンジンを意識させない自然な走り”が、このシステムでは標準装備のように提供されているのです。
2. EVのような先進機能:ステイモード & V2L
もはや「ハイブリッド=簡素」ではない
ヒョンデの第2世代ハイブリッドでは、EVのような利便性が当たり前のように搭載されています。その象徴が、「Stay Mode(ステイモード)」と「V2L(Vehicle to Load)」という2つの機能です。
▪ ステイモード(Stay Mode)
- エンジンを停止したままでも、車内のエアコン、オーディオ、照明などの電装品を使用可能
- 使用可能時間は最大1時間(バッテリー残量により変動)
- ナビゲーションと連動し、ステイモードが使われると予測される状況では事前に自動でバッテリー準備を行う
アイドリングストップ中でも快適性を保てるこの機能は、車内での待機時間が長いユーザーや、真夏・真冬のドライブにおいて大きな価値を発揮します。
▪ V2L(Vehicle to Load)
- 車両の高電圧バッテリーを利用して、外部の電化製品へ最大3.6kWの電力供給が可能
- キャンプ、アウトドア、災害時の非常用電源として非常に有効
- バッテリーが減少すると、エンジンが自動で作動し再充電を行うため、長時間使用も安心
これにより、ヒョンデのハイブリッドは単なる“移動手段”から、“移動するエネルギーベース”へと進化。クルマの可能性をさらに広げています。
3. 快適性を進化させるe-VMC 2.0
電動制御で乗り心地をチューニング
走行中の振動や車体の揺れを電動制御によってコントロールする新システムが「e-VMC 2.0(Electrification-Vehicle Motion Control)」です。これは、モーターを駆使して車体の動きをリアルタイムで最適化し、より快適で安定した乗り心地を提供します。
- e-Ride 2.0:段差やスピードバンプ通過時の縦揺れを吸収
- e-Handling 2.0:コーナリング中のロール(横揺れ)を抑制
- e-EHA 2.0:緊急回避や急ハンドル時でも車体を安定させる
従来は高級セダンにのみ搭載されるような制御技術が、今ではSUVのハイブリッドにも搭載され、ラグジュアリーな乗り心地が誰にでも手に入る時代となりました。
4. なぜ6速ATにこだわるのか?
“数ではない”という選択
多段化が進むなかで、現代はあえて6速オートマチックを採用し続けています。これは単にコスト削減のためではなく、ハイブリッドとモーター制御に最も適した構造として選ばれているのです。
- 電動モーターとの最適な同期制御を実現
- 変速フィールを保ちながらも、エネルギーロスを低減
- 構造がシンプルで、耐久性・整備性に優れる
- ドライバーに「走っている感覚」をしっかり伝える
これは「ハイブ리ッドでありながら、運転の楽しさを犠牲にしない」というヒョンデの哲学を表しています。
5. パリセード ハイブリッド:新時代の象徴
新システムを初めて採用したモデル
この第2世代ハイブリッドシステムを最初に採用したのが、現代のフラッグシップSUV「パリセード ハイブリッド」です。
- 2.5Lターボエンジンと54kW電動モーターの組み合わせ
- システム総出力:334馬力(クラストップレベル)
- 燃費効率は従来比で14〜17%向上
- e-VMC 2.0、ステイモード、V2Lを標準搭載
その高出力により、単なる“燃費志向”ではなく、牽引、オフロード、長距離ドライブにも耐える多目的SUVとしてのポテンシャルを秘めています。
さらに、アウトドアレジャーを楽しむユーザーにとっては、V2Lによる電源供給も大きな魅力となるでしょう。
この1台を通じて、ヒョンデのハイブリッドが単なる“中間技術”ではなく、“主力パワートレイン”であることがはっきりと示されました。
6. トヨタTHSとの比較
構造・走行感・戦略、すべてが異なる
カテゴリ | トヨタTHS | 現代 第2世代 |
---|---|---|
システム構成 | e-CVTベースのパワースプリット方式(遊星ギア) | P1+P2の並列構成+6速AT |
モーターの役割 | MG1:始動/発電 MG2:駆動/回生 |
P1:始動/発電 P2:駆動/回生 |
走行フィール | 効率重視でスムーズ/e-CVT特有のラバーバンド感 | 応答性が高く、ダイレクトな運転感覚 |
利便機能 | 簡素で最小限 | V2L、Stay Mode、e-VMCなどEV級の機能 |
戦略的立ち位置 | 長期的な主力パワートレインとして | フルEVへの橋渡し段階として展開 |
トヨタは燃費と信頼性を追求した“完成されたハイブリッド”を提供しているのに対し、
ヒョンデは走行性能・体験・機能性を重視した“次世代型ハイブリッド”を志向していることが分かります。
まとめ:燃費を超えた、新しいハイブリッドのカタチ
ヒョンデの第2世代ハイブリッドシステムは、単なる燃費改善技術にとどまりません。
電動モーターによる走行制御、EVレベルの快適性、実用性と高出力を兼ね備えた、まさに完成形に近いハイブリッドといえるでしょう。
パリセードを皮切りに、このシステムは今後多くの車種に展開される見込みです。
ヒョンデが提案するのは、「つなぎ」ではない、「次の主役」としてのハイブリッドです。
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